執筆者:鈴木 拓(すずき たく)のプロフィール
個人英語教室(ネット版)のイングリッシュティーチャー。年以上にわたり、名様以上に英語指導。『日経WOMAN』『English Journal』等掲載。

昔は通信簿2(5段階、公立中学)、偏差値30と英語が苦手。1年でTOEIC 900点TOEIC 990(満点)、英検1級(2次試験はほぼ満点)
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イチローさんの英語スピーチ解説・日本語訳 第2回

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イチローさんが2019年9月14日、シアトルのファンの前で英語でスピーチを行いました。

2019年3月に日本での試合を最後に引退したイチローさんですが、引退の場が日本だったため、マリナーズの本拠地シアトルでの本格的な引退セレモニー的な物になります。

イチローさんの英語のスピーチは珍しいので、じっくりと触れて、ぜひ皆さんと英語学習できればと思います。

こういった生英語の学習では毎回そうですが、背景知識もないとわからないので、背景知識の解説も行います。

何回かにわけて行いますが、本記事はその第2回目です。

第1回目はイチローさんの英語スピーチ解説・日本語訳 第1回をご覧ください。


You had every reason not to accept me.
「あなたたちは私を受け入れなくても当然でした」


★have every reason+不定詞

直訳すると「〜するすべての理由を持っている」という意味ですが、

「〜する合理的な理由として、これもある、あれもある、もう全部ある」

「これだけ理由があるのだから、〜しても当然だ」

というように、「〜して当然だ」「〜したって責められない」という意味になります。

その理由とは、イチローさんの英語スピーチ解説・日本語訳 第1回の最後で出てきた、「日本人野手初めて」というのと、

small「小さい」、skinny「痩せている」、unknown「未知の」

という部分ですね。

ファンが受け入れてくれなかったとしても(ご存知のように大歓迎で受け入れましたが)、それは無理のないことだったと言っています。


However, you welcomed me with open arms and you have never stopped, even when I left and came back.
「しかしながら、あなたたちは私を諸手を挙げて歓迎してくれて、私が(チームを)去り、戻ってきたときでさえ、あなたたちは決してやめませんでした」


★welcome O with open arms

結果的に、ですが、日本語で言う、「諸手を挙げて歓迎する」とほぼ同じ意味になります。

要するに、大歓迎するという意味ですね。

ただ、日本語の両手を挙げては、両手を上に挙げる感じですが、英語のwelcome O with open armsは、抱きしめようとして両手を横に広げているイメージです。

ご存知の方も多いかと思いますが、アメリカはhugと言って、歓迎の印や友情の印に抱き合うことが多く、open armsはhugします、大歓迎です、という意味になります。


背景知識

ご存知の方も多いかと思いますが、イチロー選手は自ら望んで、ニューヨーク・ヤンキースに移籍しています。

2001年にシアトル・マリナーズでデビューして以来、ずっと素晴らしい成績で、チームの顔であり続けましたが、最初の3年間を除けば、チームとしてはほぼ毎年、悪い成績が続きました。

環境を変えたいと思ったのもあったのだと思いますが、2012年のシーズン途中で、自ら移籍を志願し、ニューヨーク・ヤンキースにトレードで移籍しています。

メジャーリーグでは、自ら望んでチームを離れると、手のひらを返したように大きなブーイングを浴びせられることが珍しくないのですが、移籍後もシアトルのファンは温かく声援を送り続けました。

そのことをイチローさんは述べています。


I was so grateful for the chance to return in 2018 and the reason is you fans.
「私は2018年に戻ってくる機会に感謝の気持ちで一杯でしたし、理由はあなたたちファンです」


★be grateful for

イチローさんの英語スピーチ解説・日本語訳 第1回でお話しした、express 所有格 appreciationも、丁寧なthank youですが、これも丁寧なthank youです。

ただ、ちょっとニュアンスが違い、express 所有格 appreciationは、感謝の気持ちを具体的に言葉などで表すことですが、be grateful forは、単に「感謝の気持ちを感じている」という状態を指します。


★you fans

訳してしまえば、「あなたたちファン」となんでもないかもしれませんが、youというのは、実に奥が深い単語でして、「あなた」と単数も表せるし、「あなたたち」と複数も表せます。

youを使った表現で、最も多いのが、you guysです。

youだけだと、「あなた」か「あなたたち」かわかりませんが、you guysとすれば、複数で「あなたたち」だとわかります。

guyは単体で使えば「男」ですが、you guysだと男女関係なく、男性のみ、男女混合、女性のみいずれにも使えます。

ただ、ちょっとカジュアルな表現でもあるのですが、こういった野球選手のファンに対してのスピーチでは、親しみを込めて、ファンにyou guysという選手は多いですが、イチローさんはyouだけのものが多く、ここがちょっと特徴を感じます。

you fansにおいては、ファンのことを指している。そして複数であると言うのが明確になっていますね。


Thank you Seattle.
「ありがとう、シアトル」

特に解説は不要ですね。


I also appreciate the fans across America who supported me in New York, Miami, and even in many places as a visiting player.
「また、ニューヨーク、マイアミで、対戦相手として多くの場所でも応援しくれたアメリカの向こう側のファンにも感謝します」


★appreciate

これはちょっと新しい最近の英語です。

appreciateは、元々は物をOとしてないといけない動詞です。例えば、

I appreciate your kindness.
「あなたの優しさに感謝します」

などですね。

大学受験とかでは、

I appreciate ------.

(A) you
(B) your kindness
(C) your kind
(D) your kindly

で、Aは間違い。なんてのは定番問題でした。

ところが、最近は、ネイティヴが人をOにして使い出したのです。

今では、

I appreciate you.

なんてことをネイティヴは平気で言います。

イチローさんも、そのトレンドに沿って、the fansをOにしていますね。


★across

道路のように、「渡る」という感じでの、「向こう側」という意味です。

日本語で「日本の向こう側」なんて言いませんが、アメリカは、大きい国ということもあるのでしょうが、西海岸から東海岸のことをacross Americaと言ったりします。

シアトルは西海岸にあり、ニューヨークやマイアミは東海岸。時差も4時間ありますから、まさに向こう側なのです。


★visiting player

日本語で、ホームチームじゃない方のチームをよく「ビジター」と言いますが、英語でもvisitorと言ったりします。

ビジターの選手のことをvisiting playerと言います。


構造は以下のようになります。

across Americaという前置詞+名詞の形容詞を挟んで、who節(関係詞)はthe fansを修飾しています。

who節


背景知識

先ほどお話ししたように、イチローさんは自ら志願してニューヨーク・ヤンキースに移籍しました。

ニューヨークでは2年半、「準主力」的な活躍をし、チームもプレーオフまでは行きましたが、結局優勝することはできませんでした。(黒田さん、田中投手とチームメイト)

ヤンキースとは契約が終わり、マイアミ・マーリンズにFA移籍。
(日本のFA移籍と、メジャーのFA移籍はまったく意味合いが違うの、説明がむずかしいですが、ヤンキースとは契約が終わり、年齢や成績が全盛期ではないことから、ヤンキースは再契約をオファーしませんでした。だから、自由に移籍できる立場になり、マイアミに移籍しました)

代打や怪我人が出た時の穴埋め役的な役割を果たし、マイアミ在籍中に、日米通算でメジャー記録の4256安打を更新したり、メジャー通算3000安打を達成したりしています。

その後、先ほどのイチローさんの発言にあったように、2018年からはシアトル・マリナーズに復帰しました。


Baseball is truly a national pastime in America and I was so happy to play in front of the people who love and respect the game so much.

「野球は本当にアメリカでの国民的娯楽であり、私はこの競技をこれほど愛し、敬意を払う人々の前でプレーすることがとても幸せでした」


★national pastime

nationalは「国の」、pastimeは「娯楽」という意味で、「国民的娯楽」という意味になりますが、これはもはや一般名詞というより、固有名詞です。

実際には、視聴率とかで言えば、アメフトの方が野球より人気があります。

しかし、アメフトをnational pastimeとは言いません。national pastimeは、もはや固有名詞であるかのように、野球を指します。


the game

日本語だと「ゲーム」として知られており、「ゲーム」というと、テレビゲームなどの遊び的な意味のニュアンスですが、英語のgameは本当に幅広いです。

今回は「競技」という意味で使われています。the game「この競技」、つまり野球を指しています。


今回は以上です。第3回以降に続きます。