執筆者:鈴木 拓(すずき たく)のプロフィール
個人英語教室(ネット版)のイングリッシュティーチャー。年以上にわたり、名様以上に英語指導。『日経WOMAN』『English Journal』等掲載。

昔は通信簿2(5段階、公立中学)、偏差値30と英語が苦手。1年でTOEIC 900点TOEIC 990(満点)、英検1級(2次試験はほぼ満点)
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イチローさんの英語スピーチ解説・日本語訳 第5回

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※:記号について

イチローさんが2019年9月14日、シアトルのファンの前で英語でスピーチを行いました。

2019年3月に日本での試合を最後に引退したイチローさんですが、引退の場が日本だったため、マリナーズの本拠地シアトルでの本格的な引退セレモニー的な物になります。

イチローさんの英語のスピーチは珍しいので、じっくりと触れて、ぜひ皆さんと英語学習できればと思います。

こういった生英語の学習では毎回そうですが、背景知識もないとわからないので、背景知識の解説も行います。

何回かにわけて行いますが、本記事はその第5回目であり、最終回です。

第1〜4回目はイチローさんの英語スピーチ解説・日本語訳 第1回イチローさんの英語スピーチ解説・日本語訳 第2回イチローさんの英語スピーチ解説・日本語訳 第3回イチローさんの英語スピーチ解説・日本語訳 第4回をご覧ください。

These last days are just as important as the first ones and all those in between.
「これらの最後の日々は最初の日々とその間の日々とまったく同じぐらい重要です」


これは、These last days(最後の試合の日々)は、the first onesとall those in between2つと比べています。

in between

「その間の」と、何と何の間かを明言することなく表せる、便利な表現です。

今回でいうと、最後と最初の間の日々。具体的に言えば、5、6、7、8月あたりのことを指します。


背景知識

メジャーリーグは、もうプレーオフ進出が厳しいとわかると、残念ながら本当の本気でプレーしない傾向があります。

活躍をアピールしたい若手や、立場の危うい選手は別ですが、いわば立場が保証された選手は、そこまで100%真剣でないケースが多いです。

また、プレーオフを争っている時なら無理してでも出場するような怪我でも欠場が目立ったりしますし、それが「賢い行動」とみなされる傾向があります。

2018年に、大谷選手がエンゼルスがプレーオフ出場が絶望的で、トミー・ジョン手術を受けることが決まっている中、最後の試合まで出続けましたが、そのときも、「なんでプレーオフ出られないのに、プレー続けるの? さっさと手術すべき」という声も多かったです。

アメリカは、合理的というか、世界一になれる可能性があるなら全力プレー、そうじゃなきゃ来年以降に備えるという二極化している傾向があります。

イチローさんが現役の時は、一切手を抜かない人だったので、ちょっと浮いて見られることもありました。(もちろん、そのプロフェッショナルぶりを評価する人も多かったです)

おそらく、このスピーチには、「そういうときでも全力でやるべき」という信念を出されているのだと思います。


Every day you need to go about your business with the same passion.
「毎日、情熱を持って仕事に取り組む必要があります」


go about

「取り組む」という意味で使われるイディオム動詞です。


That is the greatest gift you can give to your performance and to the fans who come to enjoy this special game.
「それがあなたのパフォーマンス、そして、この特別な試合を楽しむために来てくれたファンに対してあげられる最も素晴らしいギフトなのです」


game

gameは第4回でお話ししたように、「競技」という意味もあります。

だから、this special gameは、「この特別な競技=野球」とも考えられますが、文脈上「毎日全力で取り組むべき」という流れ。

「試合」という意味もあり、むしろそっちの意味で使われることも多いです。

そう考えると、「今日、この試合を見にきてくれたファンのために」という意味の方が合致します。

これは真面目なタイプのアメリカ人選手が、「僕らにとってはたったの1試合かもしれないが、そのファンにとっては、一生に一度しか試合を見にこないかもしれない。彼らにとってはその試合が全てなのだから、毎試合全力でプレーすべき」ということがあり、その言い方とも似ています。


To the Seattle Mariners organization, I am forever grateful to you for giving me the chance to play the game I love in the city I have come to love.
「シアトル・マリナーズの組織の皆様へ、私はこの愛することになった都市で、愛する競技をプレーするチャンスを私にくれたことに一生感謝します」


grateful

「感謝の気持ちを持っている」という意味の形容詞で、be grateful「感謝します」というように、Cに入れる形でよく使われます。


come to+動詞の原形

直訳すると「〜するために来る」であり、実際にそういう意味のこともあります。

現に、この1文前のthe fans who come to enjoy this special gameは、「楽しむために来るファン」です。

ただ、イディオムで、come to+動詞の原形は、「〜するようになる」という意味もあり、今回はそういう意味で使われています。

イチローさんは最初からシアトルのことを全部知っていたわけではないけど、シアトルでプレーすることで、シアトルの良さを知りを愛するようになったということで言いたいのだと思います。


Thank you also to my family for your endless support.
「また、終わりのない応援に私の家族にも感謝します」


イチローさんは日本語のインタビューでも奥さんと飼い犬の一弓に感謝の旨を伝えますが、アメリカの選手が、こういう場面で家族に感謝を伝えるのは定番中の定番。

むしろ、言わない方が違和感があります。


Now, let's play baseball.
「さぁ、野球をしましょう」


これでイチローさんのスピーチ解説は以上になります。